薬系キャリアコンサルタント 斎藤由紀夫氏
毎年、6年制薬学部の4年生にキャリアガイダンスを行っている。その講演のなかで毎回質問していることが、「薬局はいくつあるか?」である。
本来は一人ずつ数を聞いて、その根拠となる理由を述べてもらうと色々な考え方が知れて面白いが、時間の関係で読み上げた4択の数字をそれぞれ挙手してもらった。その数字には身近な業種の店数が含まれている。ネットに公表されている直近の数字を書き留めているので、年度の多少の誤差があるかもしれないが、比較して違いを知ってもらうのが目的である。
その数であるが、①6万1791 ②5万6919 ③2万8475 ④2万3627 で、挙手が多かったのは②で次に①であったが、さすがに③と④は少なかった。皆なんとなく薬局が多いことは知っていても、まさか一番多くはないだろうと思うのが一般的である。
正解は①の6万1791が薬局 ②5万6919はコンビニエンスストア(コンビニ) ③2万8475はガソリンスタンド ④2万3627は郵便局である。薬局はコンビニより多いと思っていなかっただろうし、ガソリンスタンドや郵便局は意外と少ないと思ったのではないだろうか。
では、なぜ薬局がこんなに多いのかである。大きな要因としては、医薬分業で1974年に大幅にアップした院外処方箋料にある。
当時診療報酬が処方箋1枚当たり100円が500円に大幅にアップした。これにより院外処方箋の数が大幅に増えたことによる。それに連動して門前薬局の増加である。大学病院前には多くの薬局が立ち並び、開業している診療所前には「マンツーマン」薬局がある。
現在病院が約8千余り、開業の診療所が約10万余りあり、それぞれの院内に薬局があったとすれば大変な数であり、その時と比べれば少なくなったともいえる。問題は多いか少ないかではなく、患者にとって満足度が高くなったかどうかである。
しかし院内で薬をもらうより院外の方が多少待ち時間は短くなったが、支払う金額が多くなったことは否めない。
ところで本当に薬局の数が6万必要かどうかである。調剤中心の薬局であれば多くの薬局は必要としない。
診療・服薬指導をオンラインで行い、地区にいくつかの調剤センターをつくり、そこで調剤した薬を宅配により自宅に届ける仕組をつくればよいだけのことである。
オンラインでの診療・服薬指導は、行われてきてはいるがまだ一部である。1月から電子処方箋の運用が開始されたこともあり、さらに広がるものと思われる。
さらに規制の問題をクリアしなければならないが、調剤の業務委託については規制改革推進会議で検討されている。
だが今ある薬局の半分が在宅医療の拠点となれば、6万という数は決して多い数とは言えない。在宅医療を行う薬局は増えてきてはいるが、中小の薬局が多く、医師や医療従事者との連携や報酬上の問題からなかなか広がらない。そんな中ドラックストアのトモズなどは訪問看護ステーションの看護師との連携でのサービス事業を開始した。大手のドラッグストアやチェーン薬局が動き始めている。
2025年には団塊の世代が全員75歳以上になる。それを考えると時間は限られてきており、在宅医療での「かかりつけ薬局・薬剤師」への期待は大きい。