医薬品は、人の健康や生命を救うもの
両親が4歳の娘に薬物を与えて殺害した疑いにより逮捕されました。被害者の体内から「オランザピン」と「エチレングリコール」の2つの化学物質が検出されており、これらの化学物質により中毒死したと考えられています。
医薬品は、人の健康や生命を救うために研究し、開発されます。そんな医薬品を人の殺害のために使用するのは許されません。
「オランザピン」の添付文書には、効能・効果として以下の記載があります。
○統合失調症
○双極性障害における躁症状及びうつ症状の改善
○抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)
健康な人が服用するようなお薬ではありません。
一方の「エチレングリコール」は、自動車のエンジンの冷却水凍結などを防止する不凍液です。これを飲用すると中毒や死に至ることもあるといいます。
不凍液に関する事件は、30年くらい前にもありました。
当時、ドイツはオーストリアからワインを輸入しており、原料のブドウが不作で良質なワインが生産できない年があったといいます。
不凍液を僅かに混入させると、酸っぱいブドウを使用しても甘いワインが生産できたとか。不凍液混入ワインがドイツに大量出荷されました。
そんなワインが日本にも輸入されていたのです。
1985年、東京都立衛生研究所 生活科学部 食品研究科(当時)のN氏(東京薬科大学出身)のもとに市販されているワインが持ち込まれました。N氏は、このワインに不凍液が混入していることを分析・解明したのです。
輸入された食品には相手国の基準があり、日本では認められていない農薬が使用されているかもしれません。生産時に使用する農薬だけでなく、収穫後の倉庫保管や輸送中のカビ、病害虫の被害を防止するためポストハーベストを使用するケースもあります。ポストハーベストが、日本では認められていない農薬であることもあります。
そのことを理由に輸入を止めると、相手国の生産者に影響を与えることになるため指摘には神経を使うといいます。ともに生産や保管などを提案して問題解決することもあるようです。
自治体の衛生研究所が、国民の健康を守る
衛生研究所は、消費者が持ち込む食品に関するさまざまな問題に対応します。
「ヨーグルトにカビが生えていた」という事例は多いとか。明らかに食べ残しのヨーグルトを放置したことが原因と思われる事例でも、証明をする必要があります。実際に製品からカビが確認されればメーカーを指導するなど大変なことになるのです。
薬学出身者が食の分野でも、消費者の健康を守っているのです。老舗といわれる薬学部のOB・OGを取材すると興味深い仕事をしている人がたくさんいます。研究は創薬だけではありません。消費者に近いところで、人の生活に役立つ仕事をしています。薬学部出身者の目立たない進路でしょう。