セルフメディケーションとOTC医薬品

薬系キャリアコンサルタント 斎藤由紀夫氏

軽度な身体の不調は、自分で手当てすること

 国内でセルフメディケーションという言葉が使われてから7年以上になる。厚生労働省は「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は、自分で手当てすること」と定義されている。頭では分かっていても、身体に何か起これば薬を処方してもらうために、つい近くの医院に駆け込んでしまう、そのことが習性になっていないだろうか。

リスクの強さにより「第1類」「第2類」「第3類」に区分

 医薬品には医師の処方箋が必要な「医療用医薬品」と薬局や薬店で処方箋なしで購入できる「OTC医薬品(市販薬)」がある。OTC医薬品は、「要指導医薬品」と「一般用医薬品」に分類される。一般用医薬品は、リスクの強さにより「第1類」「第2類」「第3類」に区分されている。
 また、OTC医薬品には医療用からOTCに転用した「スイッチOTC」と、新規成分の「ダイレクトOTC」がある。最近発売された肥満症薬「アライ」は後者になる。

「スイッチOTC」の活用

 要指導医薬品は、「スイッチ直後」「新規成分」のOTC医薬品である。一般使用に当たりリスクが確立していないので、安全性の確認を目的として一定期間「要指導医薬品」に分類される。購入の際には薬剤師の対面での説明・指導が義務づけられている。
 一般用医薬品の「第1類」も薬剤師の説明・指導が必要であるが、インターネットで行うことが許可されている。

「第2類」と「第3類」の区分をなくす?

 いま、厚生労働省は一般用医薬品の「第2類」と「第3類」の区分をなくす方向で調整に入っている。現在ビタミン剤や整腸剤などの「第3類」は、購入の際に薬剤師や登録販売者の説明は不要であるが、統合された場合は「第2類」と同様に説明が努力義務になる可能性が高く、販売側の業務負担の増加は避けられない。

「セルフメディケーション税制」

 一方、推進策として2017年1月より「セルフメディケーション税制」がスタートしている。特定成分を含むOTC医薬品の購入金額が年間1万2千円を超えて、定期的な健診を受けている場合は税の控除が受けられる。確定申告をすれば、所得税の一部が還付されたり住民税が減額されたりする。但し従来の10万円を超える医療費控除と両方は申請できない。
知らない人が多いのか、2023年の申請数は4万人程度と少ない。

スイッチOTCを正しく理解することが大切

 セルフメディケーション普及の課題としては、海外でOTC医薬品と承認されているのに日本では承認されない「ドラッグロス」や、購入者のOTC医薬品への「負の心理」などがある。例えば、「処方薬の費用負担が少ない」「OTC医薬品の効き目が弱い」などである。確かに処方薬は保険適応になるので、薬代だけを考えると費用の負担は少ない。しかし初診料や様々な加算、薬局での費用などを考えると、必ずしもそうとは言えない。OTC医薬品の効き目についても、スイッチOTCで医療用と同成分・同量配合の製品が発売されている。このような情報が、正しく購入者に説明できているかが重要である。

 セルフメディケーションが定着すれば、健康促進や予防、病気の重症化防止、増大する医療費の削減にもつながる。それには、地域の核となる薬局、薬剤師の活躍が欠かせない。

    PAGE TOP
    タイトルとURLをコピーしました