⚪️先発医薬品を希望すると追加負担になる~「選定療養」制度が施行

薬系キャリアコンサルタント 斎藤由紀夫先生

○長期収載品とは
 2024年10月より長期収載品に「選定療養」制度が施行される。長期収載品は特許が切れジェネリック医薬品がある先発医薬品のことである。制度の対象となるのは発売から5年以上経過したか、ジェネリック医薬品の割合が50%以上の先発医薬品で、長期収載品のほとんどが該当する。

ジェネリック医薬品への置き換えを急ぐ
 その背景には、先発医薬品の費用負担が、財政を圧迫している状況がある。2022年度にジェネリック医薬品への置き換え比率が数量ベースで目標の8割を達成できたが、金額ベースでは諸外国に比べ低い割合にある。政府は新たな目標として、2029年度末までに全都道府県で数量シェア80%を継続、金額ベースで65%を掲げている。

○選定療養とは
 目標達成の促進策としては保険適用の治療費とは別に、費用を上積みする「選定療養」というしくみが導入される。「選定療養」は、患者が自ら病院の個室を選んだ場合、追加で支払う「差額ベッド」などでも適用されている。今回の追加負担になる薬剤料は、通常の薬代の1~3割にあたる患者負担分に、先発医薬品と薬価の高いジェネリック医薬品との差額の4分の1を上乗せすることが決まっている。

○GE医薬品があり先発品を選択すると選定療養
 具体的には、先発医薬品500円、ジェネリック医薬品250円、自己負担3割の患者が、ジェネリック医薬品がありながら先発医薬品を選ぶと、「選定療養」としてジェネリック医薬品との差額250円の4分の1が保険適応外となり、残りの3割負担分を合わせた金額200円が自己負担額となる(保険適応外分には消費税がかかる)。なお、先発医薬品が治療に必要と医師が判断した場合、ジェネリック医薬品の在庫がないなどには追加負担はかからない。

○医師の選定療養への対応
 「選定療養」の処方箋には、医師がジェネリック医薬品に「変更不可」と「患者希望」にチェックを入れる。チェックがない場合は薬剤師がジェネリック医薬品に変更できる。医師が「変更不可」にチェックを入れても、疑義解釈資料に該当しない場合は保険請求が認められないこともあり得る。

○ジェネリック薬の信頼性
 また医師のなかには治療上でジェネリック医薬品に不安を抱く人は少なくない。筆者は製薬企業の職歴もあるが同様の考えである。承認時の試験管内の同等性試験で先発医薬品と同じといえるのか、後発医薬品の多くは、原薬、添加物、製法が先発医薬品と異なるからである。それらの不安を払拭してくれるのは「オーソライズドジェネリック」である。先発医薬品メーカから許諾をうけた原薬、添加物、製法が全く同じものでジェネリックメーカーから販売されている。しかも薬価は先発医薬品の半分程度と患者負担が少ないので、医療費の削減にもなる。

 知り合いの医師にこの話をしたら、処方箋には先発医薬品の製品名を書き、「変更不可」「患者希望」にはチェックをしないと言っていた。このような処方箋に薬剤師はどのように対処するのだろうか、医療の担い手としての活躍のチャンスでもある。

    PAGE TOP
    タイトルとURLをコピーしました