8.調剤薬局(薬剤師)が患者を救う

皆さんが薬学部を卒業する頃には、
さらにやりがいに溢れた職種になる

厚生労働省0402通知」が調剤薬局の業務を変える

 従来、薬の調剤は薬剤師の業務独占事項でした。それが2019年4月2日に厚生労働省から「調剤業務のあり方について」という通知が薬剤師業務を変化させました。
 「継続した服薬指導の義務づけ」、そして「非薬剤師の(包装された薬剤)調剤」が認められたのです経口薬を利用する患者の副作用を確認することができるようになりました。
●通知内容
薬剤師の対人業務(患者対応)を充実させる

①薬剤師の対人業務(患者対応)を充実させる。

②患者が服用する薬について、継続した服薬薬指導を義務付ける。
③薬剤師の管理下で、非薬剤師が包装された錠剤を調剤することができ、最終的な責任は薬剤師が負う。
④非薬剤師は、散剤や水剤などを取り扱えない。しかし機械での調剤は認められる。
⑤納品された医薬品を棚に収める行為は調剤ではなく、非薬剤師が行うことができる。
⑥薬局経営者は、非薬剤師に対する教育・研修を行うこと。

抗がん剤の経口薬が通院を可能にしました

 がん治療は、抗がん剤の注射・点滴などのため入院が必要でした。ところが医薬品の性能が向上して、抗がん剤に錠剤(飲み薬)やカプセル剤が登場すると通院治療が可能になりました。
 患者は「自宅で家族と一緒に生活したい」と願っています。それが経口薬の登場で実現したのです。患者にとって不自由な入院生活から自宅療養、仕事をしながらの治療が可能になりました。日常生活に影響を与えることなく、患者のQOLは全く損なわれません。

怖い副作用が伴う「抗がん剤」経口薬のデメリットです

 患者が入院して、医療者のコントロールのもとにあれば副作用や病状変化が確認できます。しかし外来患者に対する医師の対応は数分間に過ぎず、その環境では副作用の確認は困難です。
 抗がん剤には、怖い副作用が伴います。そのため病院では「薬剤師外来」や「薬剤師による診察前問診」などで外来患者の副作用の発見に努力しています。患者の健康を守るため、「継続した服薬指導の義務づけ」はそのためでしょう。副作用が確認されれば、薬剤師は薬の中止や減薬、代替薬の提案を行います。認定薬局も同様の機能を発揮します。

薬剤師の仕事は「 モノ」から「対人業務」に

 対人業務とは、服薬指導を通じて効果の確認、副作用の有無の確認、ポリファーマシーや残薬の管理、医師へのフィードバックなどをいいます。
 継続して患者の様子をモニターしながら服薬指導や患者の状況を確認することを求めています。この施策は、薬剤師の負担を軽くするものではありません。薬剤師の業務独占だった調剤に非薬剤師が入るなど、薬剤師の仕事が大きく変ろうとしていることは間違いありません。
 かつて「薬剤師はミニ医者ではない」という人がいましたが、今や病院や調剤薬局の薬剤師は医療の深い知識が求められます。診療分野をまたいだ薬物・医療の知識が重要になっています。

薬剤師は患者に寄り添う医療人になる

 基本的に薬剤師は、全領域の医薬品を扱います。専門知識と幅広い知識を併せもつ必要があります。
 在宅医療では、一人ひとりの患者さんを気にかけることも大切になります。たとえば、独居の認知症患者が薬の量を間違えたり、飲むことを忘れては治療に影響が出ます。調剤薬局は、これまで以上に患者と接する医療施設の色彩が強くなります。
 医師が行う業務を看護師が担当するようになり、看護師が行っていた在宅業務の一部を薬剤師が担う計画もあります。
 医療現場では、状況を判断して即応することが求められますから、医薬の専門家としての知識が期待されます。
 大手調剤薬局は、社内教育などの体制作りを進めるなど前向きに対応しています。皆さんが薬剤師として社会に出るとき調剤薬局の存在はさらに大きく変化しています。

●リフィル処方せん
 リフィル処方箋は、2022年にスタートした制度。医師が処方せんを発行するとき、2回目、3回目にチェックを付けると、医師の診察がなくても調剤が受けられるシステムです。お薬を受けるための受診ですから診療所やクリニックなど症状が安定した患者が対象になります。
 リフィル処方せんは、2回目・3回目の調剤を行うとき、薬剤師が患者の容態を確認しなければなりません。副作用や相互作用、容態の変化などがあれば医師に報告します。薬剤師に医療・医学の知識を求めているのです。
●オンライン資格認定
 マイナンバーカードに紐づけた健康保険証から薬剤情報・特定健診などの情報が閲覧できるようになります(患者の同意が必要)。
 薬剤情報の閲覧はレセプト(医科・歯科・調剤・DPC)から抽出した情報が閲覧可能です。服薬指導に薬剤情報や特定健診情報が利用できるとなれば、薬剤師にその情報を服薬指導に活用する能力が求められます。


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