薬剤師が目の前の患者さんを相手にするのに対し、研究職や臨床開発職は患者さんと直接触れ合うことはありません。しかし創薬により世界中の患者の命に貢献するというやり甲斐や夢のある仕事です。
というとかっこいい仕事に感じますが、結果を求めてコツコツと実験を続けるなど毎日の積み重ねが必要な仕事です。
創薬研究にどんな職種と部門があるかをみてみましょう。
ゲノム創薬
日本の強みiPS細胞研究が進展しています。iPS細胞の技術から疾患にマッチした治療薬を作る研究が進んでいます。武田薬品と富士フイルムはCAR-T細胞療法を用いたがん免疫療法薬の開発に着手。東北大学(東北メディカル・メガバンク機構)は、製薬大手5社と10万人分のゲノムを解析するコンソーシアムを設立。各社がゲノムデータを創薬に活用できるようにしました。
かつては有機合成が創薬の中心でしたが、現在ではバイオ医薬品が中心になっています。各社のプロジェクトを見てもバイオ医薬品候補の「○○マブ」などの名称が目立ちます。
上市されたバイオ医薬品
生命科学や生命工学(農芸化学系)出身者もライバルです
探索・合成
医薬品の創薬研究は、薬のタネを見つける探索研究や合成研究が代表格です。
バイオ医薬品の弱点は、高額の薬価。また生物学的生産にはブラックボックスが生じます。有機合成の手法でブラックボックスを解明し、抗体医薬や核酸医薬の生産が考えられています。
エコで低コストの医薬品を創製するのも有機合成の領域です。
薬効・薬理
合成チームと研究初期からプロジェクトを組み、初期段階で安全性を確認したり、研究成果を合成チームに成果をフィードバックします。
前臨床試験
各種毒性・薬効薬理試験、化合物の中枢系、循環器系、呼吸器系の試験をマウス、ラット、ウサギ、イヌなどを使って行います。人に対する試験の前に、多量投与試験などはこの段階で行います。
DDS・製剤研究
ドラッグ・デリバリー・システム研究や安定性を高める研究、製剤研究を行います。化合物が水に溶けない性質をもてばドロップアウトの可能性があり製剤チームが早い段階で参加します。近年では、理学部出身者の進出が増えています。
バイオインフォマティクス
ゲノム創薬の研究プロセスで欠かせないツールです。標的タンパク質とリガンドとの相互作用を解明して標的タンパク質に合致する分子をin silicoでスクリーニングすることもできます。生命工学出身者もライバルです。
AI
国内約100の機関が「ライフ インテリジェンス コンソーシアム(LINC)」を組織して、創薬AIソフトを開発しています。
また日本医療研究開発機構は、国内製薬企業17社が「社外秘」としてきたデータを使ったAI開発を進めています。これほどの規模の製薬企業が創薬のためにAIを共同開発することは珍しく、海外でも例がありません。欧米のメガファーマ(巨大製薬企業)に対抗するため、オールジャパンで創薬を加速させます。